いらない土地は相続放棄できる?ルールと限定承認をわかりやすく解説

くらしとお金のアドバイザー、ファイナンシャル・プランナーの水島幸代です。

未来の相続の話になるとき、こんな言葉を耳にすることがあります。
「私は相続を放棄するから」
「この土地はいらないよ」

でも、実際は、そんなに自由に選べるものではありません。

思い通りに“受け取る・受け取らない”を決められるわけではなく、一定のルールの中で向き合う必要があります。

相続放棄は“全部”手放すこと

相続放棄という制度は、たしかに用意されています。
ただしこれは、プラスの財産も、マイナスの財産も、すべてを手放す手続きです。

たとえば、
「預金はいらないけど、この不動産だけ欲しい」
「この土地だけいらない」
といったように、一部だけを選んで放棄することはできません。

相続放棄の期限は3か月──家庭裁判所への申し出が必要

原則として、相続の開始を知ってから3か月以内に手続きを行う必要があります。
家庭裁判所に申し出が必要ですが、一度手続きを行うと取り消しはできません。

また、何もしなければ、自動的に相続したことになってしまう点にも注意が必要です。

“全部まとめて判断する”という考え方

相続には、もう一つ「限定承認」という方法もあります。

これは、相続した財産の範囲内で亡くなった方の借金などのマイナスの財産を引き受ける、という仕組みです。

たとえば、亡くなった方に500万円の負債があったとします。
資産が1000万円あれば、借金を返したうえで、差し引き500万円が手元に残ります。
一方、資産が300万円の場合は、その300万円の範囲で返済すればよく、残りの200万円を支払う必要はありません。

プラスとマイナスを見比べて判断できる方法ではありますが、ここでもポイントは同じです。
財産を一つ一つ選ぶことはできず、すべてをまとめて扱う必要があります。
つまり、プラスの財産だけを受け取り、マイナスの部分だけを切り離す、ということはできないのです。

“いらない”と言えない現実

私自身、まさにそのことを実感しています。

祖父の代から引き継がれてきた、ある土地があります。
地方都市の市街化調整区域にある竹林で、場所も詳しくは把握していません。
祖父が亡くなった際に自動的に祖母が相続し、祖母の相続時には父が引き継ぐことになり、とうとう私のところに来ています。

活用は難しく、手放したいと思っても簡単ではありません。
売却もできず、引き取り手も見つからない。そして、管理責任だけは所有者にある…

それでも、その土地だけを「いらない」と切り離すことはできません。

相続は、良いものだけを選んで受け取ることができる仕組みではない。そんな現実を、身近なところで感じています。

思い通りに分けられるとは限らない

さらに、相続は「誰にどれだけ渡すか」という点でも、完全に自由に決められるわけではありません。

たとえば遺言で特定の人に多く残したいと思っても、一定の相続人には「遺留分」という権利があり、必ずしもその通りにはならないことがあります。

相続は、ひとりの希望だけで決められるものではありません。

“方向を示す”という備え

では、どう備えておけばよいのでしょうか。

相続は、すべてを思い通りにコントロールできるものではありません。
それでも、何も準備しないよりは、できることがあります。

たとえば、遺言を残しておくこと。

「誰に、何を、どう残したいか」
その方向を示しておくだけでも、残された人の判断の助けになります。

相続は、現実に起きてから考えるには難しいテーマです。

亡くなったことを知ってから3か月以内に放棄や限定承認などの方針を決め、10か月以内には申告や納税も必要になります。残された者にとって、この時間的な制約は思っている以上に厳しい現実です。

元気なうちに、少しだけ考えてみること。それが、これからの安心につながっていくのかもしれません。
→ 相続は「まだ先」じゃない?元気なうちに考える理由

相続のしくみ、まずは基本をおさえるにはこちらをご覧ください。
→ 相続のしくみをやさしく整理|知っておきたい基本ルール

FPあくあ屋は、あなたの学びを応援します。