着物選びが悩ましい、30度超えの9月半ば
朝晩に虫の声も聞こえてきますし、白露を過ぎると、どうも麻は着る気になりません。とはいえ、お日さまが出ていると、昼間の気温は30度を超えるこの頃。1年でいちばん着物選びが悩ましい9月です。
きものでお出かけ。汗が出る時期のお勧めは、いつでも美術館です。ということで、東京都美術館で開催中のボストン美術館展を見てまいりました。考えることは皆さま同じなのか、思いのほかお着物姿の方が多くいらっしゃいました。これが、実におもしろい・・・
日陰に入ると若干涼しいものの、快晴、気温は30度超え。皆さま、悩まれた結果のコーディネートなのでしょう。あまりに面白かったので、備忘録代わりに書き留めておきます。
上野公園を歩く浴衣姿のお嬢様は、素足に下駄。真夏の花火大会でよく見かけるような装いです。
ご年配の女性は、素肌に綿紅梅・半幅帯、足元は足袋を履いていらっしゃいますが、日傘を持つ手元からは襦袢を着ていない素腕がのぞきます。やはり盛夏の装いです。
綿しじらの下に長襦袢、お足元は足袋に草履というお姿の方。まだ汗だくになるような日でしたので、そういうときは綿は最強ですね。この方は、帯だけ、少し季節が進んだ秋の柄でした。とてもおしゃれです。
さて、美術館の中。こちらはさすがに花火大会や縁日に行くような浴衣姿の方はいらっしゃいませんでしたが、圧倒的に綿。やはり汗を気にされていらっしゃるのでしょう。見ていても暑苦しくもなく、汗をかいてもお手入れも楽々。季節にも馴染んでいて、とてもお似合いでした。
額やうなじに流れる汗をぬぐいながら、教科書通りに絹の単衣に夏帯ではない名古屋帯をお召しの方もいらっしゃいました。さすがに暑そうです。暑くても涼しい顔をして着たいものですが、暑いものは暑い。流れる汗は止められません。
絹ものでは、まだまだ絽や麻の着物をお召しの方が多かったですね。透け感の少ないものを選べば季節相応だと思いますが、あくあ屋自身は白露を過ぎたら麻のきものは着ません。
黒っぽい紗の着物に、白い麻の襦袢。紗合せではないので、下にお召しになった白の襦袢が見事にすけていた方がいらっしゃいました。さらに羅という透け感の強い織りの夏帯。素足に浴衣と同じくらいの真夏っぷりです。さすがに季節に合わない気もいたしますが、着物警察がウザいとおっしゃる方も多い中、ある意味、勇気あるコーディネートかもしれません。
自分が着るのだから何を着たっていいじゃないか、というご意見には、その通りとしか言いようがありません。ただ、洋服売り場が季節を感じるディスプレイをしているのと同様に、和装でも季節を感じる・楽しむ要素もぜひ加えてあげてほしいなぁ、とは思います。着物の世界では、それを「着こなし」と呼んだりします。
さて、あくあ屋はこの日、透け感のない花織の夏着物に麻の長襦袢。帯は、目の詰まった博多の夏帯。そして、ずいぶん前にソウルで購入した刺繍ブローチを自分で改造した帯留を身につけておりました。菊のような葉ですが、色的に遠くからコスモスに見間違えれくれれば大成功なのですが。。。
雑誌やネットで見かける素晴らしいコーディネートにあるような着物や帯を誰もが買えるわけではなく、すべての季節に合うものを順に買いそろえるわけにもいきません。着物選びや季節のコーディネートにお悩みがある方は、街を歩く着物姿の方をたくさん見て、自分なりの工夫で季節の着こなしをしてみましょう!