歌枕 ~ サントリー美術館
子どもの頃に行っていた書道教室では、中学1年生になると仮名文字を教えてもらうことができました。古今仮名、万葉仮名と、10年くらい続けたでしょうか。嫌いではなかったのですが、母の意向が強かった習い事で、社会人になり自立心が高まるにつれ違うことに夢中になっていき、いつの間にか教室にはいかなくなってしまいました。
着物や帯の柄を見ていると、古い和歌からモチーフをとったものがよく見られます。よく知るところでは、百人一首に挙げられているような和歌から情景をおこしたものがあります。歌絵文様などともよびますが、文字そのものを着物に刺繍したり、和歌の上(または下)の句だけを文字で縫い、半分を柄にしていることもあります。和歌の知識があると、こうした昔の着物を見るのもとても面白いものです。
今、サントリー美術館で和歌をテーマにした展示を行っています。「歌枕」とは、和歌に詠みこまれた名所(地名)のことで、絵を伴うと、今でいう全国名所旧跡のガイドブックになります。源氏物語や伊勢物語など、物語からモチーフを得た歌や絵もあります。簡単に行き来することのできない遠くの名所をこのように楽しんでいたのですね。
写真は、19歳くらいのあくあ屋の作品です。広げると2mくらいになる屏風一面に六歌仙の和歌を書き散らしています。さすがにマンション住まいでは置き場もなく、実家じまいの際に差し上げてしまいました。だいぶ忘れてしまいましたが、それでも美術館などで展示された仮名文字を多少は読めるのはありがたいことです。
夏着物で歩きたいときに美術館は快適です。”今は昔”の日本旅行のガイドブック、サントリー美術館の「歌枕」は来週いっぱいで終わってしまうようです。夏着物や浴衣をしまう前に、もう一度、着物でおでかけしてみませんか?