芭蕉布を学ぶ

夏の暑い週末。夏着物を着た女性たちが虎ノ門の坂を歩いています。遠方の方はピンとこないかもしれませんが、政治の中心、霞が関に近いオフィス街では珍しい光景です。目指すはホテルオークラ東京の敷地内にある大倉集古館。沖縄本土復帰50周年の今年、全国あちこちで沖縄関連の展示を行っていますが、大倉集古館では芭蕉布の展示を行っています。

芭蕉布とは、読んでそのまま、芭蕉から作った布。南の島へ行くことがない方は植物園以外で目にすることはないかもしれませんが、英名はJapanese Banana ジャパニーズ・バナナというほど、バナナに似た大きな葉をもつ木です。その茎から糸を作り、布にしますが、その糸をとるまでに途方もない時間と手間がかかる工程を経ています。

芭蕉布は、琉球王国の時代から江戸や薩摩、遠くは明との貴重な交易品であり、古い歴史と伝統があります。戦後、様々な事情からその担い手がいなくなる危機がありましたが、伝統を守り、残すことに尽力した沖縄北部・大宜味村喜如嘉(地名:おおぎみそん きじょか)の平良敏子さんの活動により、芭蕉布は現在、国の重要無形文化財に指定された染織技法となっています。

いまや気軽に手に入る布ではなくなってしまっていますが、これだけまとまった数の芭蕉布を見る機会すらありません。ぜひご自身の目でその技を見て、歴史を学んでいただきたいです。

さて、あくあ屋は・・・ 雲の上の芭蕉布を愛でつつ、見に集う方々の着物姿にも見惚れておりました。夏着物は難しい・・・と悩む方々には、夏大島、夏結城、小千谷縮や明石縮、上布など、夏着物の展示会のような会場の風景も楽しいはず?!

特別展 「芭蕉布~ 人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事」は、7月31日までです。

2022/09/16 追記:
人間国宝・平良敏子さんが鬼籍に入られました。101歳。この夏に東京で喜如嘉の芭蕉布展を行ったばかりでしたので、驚きとともに大変な喪失感です。偉大な功績を残された作り手のご冥福を心からお祈り申し上げます。