着物や帯の「格」
着物には格があると聞いたので・・・と、恐る恐るご質問をされる方がとても多くいらっしゃいます。
初めて着物を着たいと思った日から、本や雑誌をめくったり、ネットサーフィンをしたり、教室でなど習わなくても、実に様々な勉強を自主的に開始していらっしゃいます。そうした方の気力をしぼませてしまうこの言葉、「格」。
自分の着ようと思っている着物は、買いたいと思っていた帯は、大丈夫なのだろうか?自分は格を理解できるのだろうか?なんとなく不安になってしまい、またネット中をさまよい始めます。
「格」とは?
困ったときの「広辞苑」!といきたいところですが、残念ながら手元にはありませんので引用ができません。 お手元の辞書でぜひ引いてみてください。 一般的に、格とは、流儀や決まりごと、そのものの値打ちによった等級といったものを指し示します。 さほど恐れるような内容ではありませんが、「格」という言葉には、なにやら特別な響きが含まれてしまうようです。
若い層が書いたであろう着物情報ページなどでは、「TPO」という言葉を使っていることが増えてきたように思えます。Time (時)、Place(場所)、Occasion(場合)。これなら想像できて、安心ですね。
シーンを考える
着物と帯はセットで身につけて初めて皆さんがイメージする着物姿になります。その着物も帯も、カジュアルから正装まで、素材や帯の寸法などに応じて様々な種類があり、着ていくシーンが決まります。
まずはシーンを考えてみましょう。気兼ねない友人と居酒屋ディナーをするとき、デートで有名フレンチレストランへ行くとき、お子様の入園式や卒園式、あらたまった式典に招待されたとき、エプロンや割烹着をかけて家事をする普段着。ジーンズにTシャツで招待された式典に出席することはありませんし、居酒屋へ行くときにわざわざロングドレスを選んで着ることはありません。
洋服であっても、それぞれのシーンに合わせた選び方をするのと同様に、着物もシーンに合わせて選びます。それを、「格」と表現しています。
必要なものだけあればいい
着物には格がある、つまり、着ていく時・場所・場合を考えた着物や帯を選びましょう、と言っているだけです。あらたまった場所のときだけに着物を着たいという方から、あらたまった場所では洋服がいいがカジュアルに友人と遊びに行く時だけおしゃれ感覚で着物を着たい、という方もいらっしゃいます。
カジュアルなシーンでだけおしゃれに着こなしたいと思っているのに、「これは揃えておくべき帯である」と言われ、最初に礼装用の袋帯を買ってしまった、という話もよく耳にします。ふんだんな資金があれば別ですが、限られたお小遣いでおしゃれを楽しみたかっただけなのに、小さな失敗が不安に変わり、着物離れしてしまうことにもなりかねません。
着物を着たいと思ったからと言って、カジュアルから礼装までの一式をそろえなければならないことなどありません。すべてが新品である必要もありません。まずは今一番着たいと思うシーンの着物から、ご自身のお財布を考えながら、少しずつ。「格」という、格のある言葉に惑わされないよう、楽しくおしゃれを楽しんでください!